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ささめきこと(5)

コミックアライブにて連載中、痛快さはなくなってきた百合漫画『ささめきこと』5巻が発売されました。
来月からアニメ化を控えているこの作品、公式サイトができたおかげで「こんなお話です」と紹介するのが非常に楽になったなあ。

試読はこちらで可能です。旧ビューアの方がすぐに読めて楽かと。また、コミックアライブの公式サイトでも第1話は読めるようです。

前巻は過去のエピソード(純夏と汐がその友情を構築していく過程が描かれていました)がたっぷりでしたが、今巻は現在に時間軸が戻ってきます。最初にインターバルを挟んだ後は、再び本編(っていうのかな)が開始。

今エントリでは、試験的に小見出しを付けています。多少は読み易くなるといいな。
色々なレビューサイトを見て回ったところ、こうしてる方が多かったんで真似してみたんですが、自分の(効果的な小見出しのネーミングについての)センスのなさに絶望しそうになりました。それでもめげずに、文章が長くなってしまう時にはこの方式で行こうと思います。

汐の外に向けたキャラ作りと、そのせいで深まってしまう溝

さて、純夏達は2年生になり、下級生を迎える立場になります。というわけで、第26話は入学式からスタート。
たくさんの生徒が集まるイベントですから、普段なら汐はカワイイ子を探すのに懸命なはず。ですが、「カワイイ子いそう?」なんて声をかけるキョリちゃんに、式の最中はキョロキョロしてはダメだ、なんて落ち着いた様子で注意する汐の姿は非常に印象的でした。
彼女の説明によると「お姉サマとしての魅力を磨いて」カワイイ子を引き寄せることにした、なんてことらしいですが、それが嘘なのは自明。
純夏がその感情を爆発させたエピソード(第16話。「――私は 小さくもカワイクもなれないからッ!」との台詞は、僕の胸を締め付けました。思い出してもちょっと泣けてくる)以来、妙にギクシャクしてしまった関係を修復したいんであろう汐が、彼女なりに考えての発言だったわけです。純夏の前で他の子を「カワイイ、カワイイ」と連呼していたバカな自分を戒め、今後は純夏に嫌な思いをさせないようにしよう、と。
また、純夏への恋に気付いてしまった汐は、他の女の子への興味を根本的に失ってしまった、というのもあるんだろうと思います。そりゃあカワイイ子がいれば気にはなるのかもしれませんが、それは今までのように恋や興味に直結していくものではなくて、一般人がテレビで女優やアイドルを見て可愛いなあ、と感じるのと変わらないものなんじゃないでしょうか。

ただ、そんな汐の態度が「ムリをしてる」もののように純夏には見えてしまい、純夏の心からの笑顔は戻ってきません。自分がかつて怒鳴り付けたせいで、汐がカワイイ子を見つけてもはしゃがなくなってしまった、と苦笑する純夏は汐の本心に全く気付いていないわけですが、これは無理もないことなんだろうなあ。実際、汐がその感情を純夏に対してぶつけたことはないわけですから。
お姉サマとしての魅力云々なんて気を利かせた台詞を口にしたつもりが、むしろ純夏をある意味では遠ざけてしまっている辺り、2人のすれ違いが続いている……それどころか悪化しているような感すらあります。本当に、見ていて心苦しい。

もう1つのすれ違い

そんな彼女達のすれ違いが、ついには心理面に止まらなくなってしまうのが今巻です。

純夏の所属する女子空手部の朝練のせいで別々に登校している2人。せめて一緒にいる時間を増やしてその距離を縮めようと思い立った汐は、女子空手部への入部を決意します。
純夏は戸惑うかもしれないけれど、試合に出るには人数が足りない(5人必要なところ、4人しかいない)点を補えるから、そのことで女子空手部の面々も喜ぶだろうし、その勢いでそんな戸惑いはうやむやにできちゃうだろう、なんて具合になけなしの小遣いをはたいて道着まで用意してしまうんですよね。

そしてある朝、汐ははやる想いを抑えつつバス亭で純夏を待ちます。汐と早朝に出会ったことを訝しむ純夏に向かい、汐が意を決して女子空手部入部の話を口に出そうとした途端……
独りぼっちの汐と同じバスに乗り、その仲の良さを見せつけていた新入生の女子2人組が現れます。彼女達こそが汐の女子空手部入部希望の原因の1つなわけですが、何とその2人は女子空手部への入部をその場で宣言してしまうのです。話の展開という点ではある意味非常に空気が読めているけれども、汐にとっては恐ろしいほどの邪魔者っぷりだったことでしょう。
そんなこんなで結局、純夏は女子空手部の朝練に付きっきりになってしまい、汐は彼女と2人になれる時間を獲得できずに終わってしまうのです。

この二重のすれ違いが、汐の心理を孤独へと追いやっているように感じました。表紙の、ぽつんと教室に佇む汐の寂しげな姿が、たまらなく僕の心を抉ります。今まで一緒に表紙を飾っていた純夏は、汐の傍を離れていってしまったんだな……なんて。

そのすれ違いは避けられたか

上で色々と書いてはいるんですが、実をいいますと、汐が女子空手部に入部したところで問題は解決しなかったろうなあと思うんですよね。

一時期、カワイイ女の子を愛する汐に振り向いてもらうために、純夏は空手から離れています。まあその目論見は失敗に終わってしまいますが……とにかく、空手はカワイイ女の子とは無縁なものである、と彼女は考えたわけです。
それにも関わらず汐は、空手バカであるロッテに並々ならぬ興味を抱いていました。そこで純夏が覚えたのが、「ガワさえ好みに合えばいいのか」という苦い感情。自らの体の大きさ、「カワイイ」とはいえないビジュアルには汐は振り向かない、と思い知らされたものこそ空手なんですよね。
そういう意味で、純夏は汐と空手の取り合わせに対して苦い思い出を持っているわけで、汐が女子空手部に入部したところでなあ……と考えた次第です。

また汐は、純夏が空手をしている際に、道場にはほとんど顔を出していないというのもイタイ。
2人の仲を心配している朋絵が気を利かせて、フィットネス気分で汐も空手を始めてはどうか、なんて発言をしてくれるんですが、「やらないよねえ? 風間は そんな 空手なんて乱暴な事」(p.62)と当の純夏は反対気味。それに対し、汐がまんざらでもないような様子を見せると、ほとんど道場に来ないくせに……と手厳しい一言が純夏の口から飛び出すわけです。
汐が気を遣っているんじゃないか、との想いがそこには多分にあるんですよね。どうしていつも通り接してくれないのか、という憤りが生まれてしまうのも無理からぬことでしょう。

気持ちに嘘をつきたがる2人

「これは恋じゃない だって恋は いつか破れてしまうものだから」(p.41,42)
自分の本当の気持ちに気付いた汐が、胸中で繰り返し呟く台詞です。今まで何度も何度も恋をして、そして同じ数だけそれが実らぬ辛さを味わってきた汐の言葉だからこそ、確かな重みを持っているように感じました。
拒絶されることを恐れ、現在の友情関係すら壊れてしまうかもしれないなら、そこには恋なんて存在しないと自らに言い聞かせる汐の心情は、これ以上ない程に奥手な人間のそれ。気になった女の子には積極的にアプローチしていた汐は、もういません。

対する純夏は、汐を見ているだけで幸せなんてことを言っていました。
結局のところ、彼女はただの一度も積極的に動いたことはありません。その感情を吐露した時も結局、汐に対する想いを伝えたわけではないですしね。その、外見的な強さとは対極にある臆病さから出てしまったのが、この嘘なんだと思います。

そして彼女は、自らの中で更に嘘を重ねます。「風間になんて出会わなければよかった」「好きになんてならなければよかった」(p.157,158)
辛いのは勿論分かります。その苦しみが尋常でないことも理解できます。空手において体を動かしている内に、悩みを持たなかった頃の自分に戻りたくなってしまうのも無理はないでしょう。
だけど好きにならなければよかったなんて、本当はそうじゃないんだろう? ……きっと純夏自身が、誰よりもそれが嘘であることを知っているんだとは思うけれど、彼女がそんな言葉を吐き出してしまったことが本当に切なかった。

山崎アケミの消失

とか書くと凄くシリアスっぽくなりますが、全くそんなことはありません。

さて、今巻の冒頭のカラーページを使っている、第25話について少々。
まず、「春のお出かけワンピ」に身を固め、ファッション誌の表紙用写真の撮影に臨む朱宮くんの勇姿から話は始ります。作中でもトップレベルの可愛さを誇る彼ですが、最近は出番が少なめだったので、その実力を発揮しているのは久し振りな気が。

このエピソードでは、朱宮くんのキャラがちょっとオカシなことになってきている点が明らかになったのは嬉しかった。
学校で受けた進路調査に対する回答で、進学でも就職でも無く「お嫁さん」なんてのが出てくるぐらいに朱宮くんは乙女になってしまっているのです。そもそもそれはいわゆる進路じゃない。

そんな彼の前に、ロッテのお母さんであるドロシーさんが初登場。愛くるしいビジュアルを持ちながらもむさ苦しい空手に精を出す娘・ロッテの姿に嘆く彼女は、朱宮くんにロッテを「女の子」らしく教育してくれるように頭を下げます。
それに応えて頑張る朱宮くん。『ささめきこと』において、ここまで頼れる男子がかつていたでしょうか、というぐらいの大活躍。やってる事そのものは全く男らしくないけれど、ロッテに自分の持てるものを叩き込む彼の姿は、ある種の雄々しさすら感じさせます。

それは何故か。
作中のサブ女子キャラは、しっかりとした足取りで自らの道を歩んでいる子が多く、それがメインキャラである純夏と汐の関係性の儚さを一層引き立てているんですよね。
その一方で男子キャラは誰もが(女の子達の世界を壊さないためか、大抵は名無しでしたが)情けなく描写されていて、その対比によって純夏の「男らしさ」が描かれてきたわけです。ところが、新たな一歩を踏み出した朱宮くんは純夏よりも余程「男らしさ」を持っているように思ったのだ、という次第です。

そういう意味ではついに内的に強い男子が登場してきたわけで、今後は外的な強さを持っているに過ぎない純夏の心の弱さが一層輝いたりするかもしれないなー、と「可愛くないところこそが可愛い」女子好きな僕としては楽しみです……なんてことを雑誌掲載時には書いてたんですが、このエピソード以降は、純夏と汐のすれ違いが完全にメインになってしまい、それどころではありませんでした。

完全に余談ですが、この話のタイトルは「彼と彼女の宝物」。彼ってのは勿論朱宮くんで、その宝物が自分への自信になっていく様子が分かって、朱宮くんファン垂涎だなあなんて思いながら読み進めてたんですが……最後の最後で、とあるアクシデントにより、物理的な「宝物」も拝めます。ああ「宝物」ってそういう……(←×
そしてその事故のせいで、山崎アケミ(朱宮くんが名乗っているモデル名。女性のフリをしています)はファッション業界から姿を消してしまうのです。それで「消失」なんて書いたわけですよ。完全にコメディ仕立てなので、今巻で唯一ホッとできるエピソードなんじゃないでしょうか。



というわけで、久々の長文でした。『それだけでうれしい』でNTRについて書いてた時は、とっても気楽に色々とシチュを想像したりしながらの作業してたんですが、今回は結構難産でした。既巻・新巻を読んでは泣きながら、キーボード打ってましたからね!(←×

いけだたかしさんのサイトはこちら→"いけだの国"

関連:『ささめきこと』(3)感想(4)感想
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テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
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