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第七女子会彷徨(1)

COMICリュウにて連載中の漫画が単行本化。作者のつばなさん、初の単行本です。
帯のコメントは石黒正数さん。この作品のヒロインは2人とも、割と喜怒哀楽がハッキリとしていながらも何処か飄々としているところもあったりして、ちょっと石黒正数さんの作品のキャラを彷彿とさせたりもします……と思っていたら、つばなさんは石黒正数さんのアシスタントをなさっていたこともあるそうなので、納得。

SFめいた世界で、ごく普通に日常を過ごす2人の女子高生、高木さんと金やん(表紙の女子、上と下)の姿が描かれた作品です。これは非常に好み。感想を書こうと思いながら何度か読み返している内に、数日経ってしまったくらい。
ホント、COMICリュウはいい漫画雑誌です……廃刊になったら最も困る雑誌かもしれません。4コマ雑誌以外はあまり買わない僕ですが、リュウとYKアワーズだけは時々購入してます。時々じゃダメだよなあ、と思いつつも……

閑話休題。
まず読んで心惹かれたのが、そのSF的世界観。就寝・覚醒の時刻を設定することで、思い通りに眠ったり起きたりできる睡眠調節機や、記憶の時間軸を操作するだけで、手軽に過去のことを思い出せる機械を揃えた「追憶屋」の存在など、日常に浸透している数々の非現実的なものが、僕らの住む世界の空気とは明らかに異なるそれを感じさせてくれます。

その中でも特に際立っているものが、デジタル天国。この世界では人間の「心」のデータ抽出ができるらしく、死亡して肉体を失った人間もデータ上の世界で存在し続け、現実世界で人工の身体が作られるのを待っているのだそうです。更に、デジタル天国と現実世界とのコンタクトも、面倒ではあるものの可能なようで、肉体の死亡にそこまで特別の意味がなくなってしまっている感じ。
ある意味、これこそ死と隣り合わせの世界なんじゃないでしょうか。生と死の境界線が曖昧になり過ぎていて、隣り合わせていることにすら気付かなくなってしまいそうでもあるけれど。そういう点では、僕らとこの世界の人々との間で、最も価値観にズレが出る辺りかもしれませんね。読んでいてちょっとした気持ち悪さ……というか、理解できないものへの怖さを感じます。

どうでもいいけど、僕自身はデジタル天国での生活はあまり楽しめそうにないかもしれません。所有物も世界もデータである以上、それが消尽する恐れはないのかもしれないし、特に何かしないと暮らしていけないというわけでもなさそうなので、ニート生活を楽しむ分には最高級の環境なのかもしれませんが、あくまでデータとして誰かに管理されてる以上は、自分で自分の幕引きすら決められないってことなんですよね。別に僕が自殺願望を持ってるとかそういうわけではなく、その程度の自己決定権ぐらいはしっかりと握っていたいなあ、というお話。子供っぽいのかもしれない。

さて、こうしたSF的世界観は確かにハードで色々と考えさせることはあるものの、とても珍しいってほどのものではありません。まあ、それだけでも十分面白いんですけども。
では何が、これ以上ないぐらい僕の琴線に触れたのか。それは、ちょっと変わった、だけど普通の女の子達が、そんなわけの分からん世界でものほほんと暮らしている様子なのです。
妖しげな魅力に満ちたガジェットや現象を当たり前のように呑み込んで、高木さんと金やんはごくごく自然に、日常生活を展開していきます。そのギャップの見事さもさることながら、僕が垣間見ているのは奇天烈な世界なはずなのに、そこに暮らしている少女達の感覚、流れていく日々へのスタンスは意外に僕のそれとそう変わらないという……その辺りに、ノックダウンされてしまったんじゃなかろうかと思うのです。
日常を丁寧に生きている人の姿を見るのは、ただそれだけでも十分に楽しいんですが、僕の知らないものや不思議に満ちた世界でのそれってのは、世界そのものに対する憧れも相俟って、ますます魅力的に見えてくるんですよね。この思いは、大石まさるさんや菅浩江さんの一部の作品に対して感じるものに近いかな。

更に僕が引き込まれた要因の1つに、高木さんと金やんの関係があるのかもしれません。
傍から見ると高木さんが金やんに迷惑をかけてばっかりいるようにしか思えない。だけどあくまで2人は対等で、文句から「好き」(百合とかそういった意味ではなく)なんて言葉まで、本当に何でも言い合える友達同士。多分、金やんは金やんで、高木さんから何かしらを得ていてフィフティーフィフティーだったりするんじゃないかな、なんて僕は考えるわけです。
"友達選定"なる、高校入学と同時に友達が組み与えられる制度に対してどうにも違和感を拭えず、最初は高木さんと特に仲良くする気はなかった金やんが、高木さんと付き合っていく内に、その一歩間違えればエキセントリックなアホっぽさに「クセになりそうで」なんてことを口にしちゃう程に惹かれていく様子を見ていても、何となくそんなことが感じられます。高木さんが"友達選定"に対して感じていた気持ち悪さ(そういえば「追憶屋」の利用にも微妙に抵抗を感じていたりする点、他のキャラに比べると彼女の思考は僕らのそれに近いのかもしれません)を、金やんのわけの分からん面白さが完全に払拭してしまうんですよね。

そんなこんなで、個人的には非常にオススメ。作者のつばなさんは第1回龍神賞で銅龍賞を受賞された方で、これが初単行本なんで、追いかけるのもまだ楽ですよ!

ちなみに、タイトルの元ネタは尾崎翠さんの『第七官界彷徨』だそうです。この漫画を読んですぐ、そちらの文庫も購入して参りました。丁度、河出文庫で出たばっかりだったので。
五官と第六感の先にある感覚、第七官に響くような詩を書きたいと願う赤いちぢれ毛の少女が主人公なんですが、タイトルに彷徨とある通りに、彼女自身も第七官に響く詩とは一体どういったものなのかを分からずに日々を彷徨っており、それを見ている読み手もまた、第七官(界)とはそもそも何なのかを求めて作品世界を巡り歩く、そんな感じの小説です。すっきりしたような、そうでもないような読後感が不思議な作品でした。
ところで第六感の先にある、なんて言葉を見つけた途端に「セブンセンシズだこれ!」と思ってしまったんですが、多分そういう読者は僕だけではないはず。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
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